箱スカ チューニング日記 2001年3月24日〜 ビッグバルブ化ヘッドの製作

ヘッド製作の決断理由
 私のエンジンがL28ノーマルから現在の仕様になったのは今から約2年程前、腰下は中古クランク、中古コンロッド、新品ピストンを使用し新規に製作しましたが、ヘッド関係は中古N42キャブヘッド(1.5mm面 研済みのものを入手)をビッグポートに合わせてポート研摩、カメアリエンジンワークス製の75度Aカム(ノーマルヘッド、ピストン対応の大人しいローリフト・カム)+強化バルブスプリングにノーマルバルブという仕様でした。

内容としてはフルチューンとは言い難いものでしたが、資金に余裕の無い私にとっては精一杯。
それでもシャシダイで約300馬力を達成し、しかも低速トルク充分で非常に乗り易い特性を得たのです。

 しかし最近タペットクリアランスが狭まるという現象で、頻繁に調整が必要となって来ました。
オイル消費も激しくなり、『そろそろオーバーホール時期か?』と思い、ちょうどサーキット走行会の予定も入ったので色々検討した結果 、以前降ろしたN42インジェクションヘッド(完全ノーマル)を現在の仕様と同等に加工し載せかえる事とたのです。

私の箱スカは唯一の足でもあるため、不動時間を極力少なくするためです。
実はその時にヘッドの燃焼室加工なども考えたのですが、期間、資金共に不足のため諦めました...
結局、ノーマルシート対応のビッグバルブ(45/36.5)装着、及びそれに伴うノーマルシートカット、バルブガイド入れ替え(50/59mm)
カムは現在のAカム、面研1.5mmという内容です。
これでも加工賃、パーツ代の捻出には手持ちのパーツを尽く売却し、何とか絞り出したのでした...(泣)

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まずは加工するヘッド降ろし
これは以前降ろしたL28ノーマルエンジンです。
F54ブロックにN42ヘッド、ローレルに搭載されていた物です。

今回こいつのヘッドを加工します。




『......』
 と、加工目的のヘッドを降ろしたら...
大自然が織り成す湖が...(笑)
しっかりとビニールで包んでいたのですが...
半青空ガレージチューナー?(笑)の辛いところです。




加工に旅立つヘッドです
 これが降ろしたノーマルのN42ヘッドです。バルブもノーマル、燃焼室もノーマル、面研すらしていません。
本当は燃焼室加工用に温存しておきたかったのですが...




ヘッド加工完了!
 そしてそのヘッドが加工から上がって来ました。
友人の工場R-moonを通 してナプレックさんにお願いしましたが、加工は非常に丁寧で確実なものでした。




念願の(ちょっとだけ)ビッグバルブ
 今回新調したビッグバルブ(カメアリエンジンワークス製)を入れてみます。
綺麗なパーツは良いものですね〜。
欲を言えば、燃焼室をハート型にして、本当のビッグバルブ(46/38mm)にしたかったのですが...




ポート の加工
 加工からは上がったものの、まだ終わりではありません。
ビッグポートに合わせてポート研摩を行わなければなりません。
ビッグポート用のガスケットを当てて、ケガキ針でポートの形状をヘッドにケガキます。
そこからはリューターを使用して地道な作業となる訳です。
走行会までの時間も無く、仕事から帰宅後、毎晩ポート研摩する事となりました...




ポート加工中
 ポートはケガいた形状から出来る限り直線的に掘り進みました。
ポートの形状には人それぞれ考え方があり色々なのですが、特に何も考えず(笑)、段付きやバリを取り除く方向で加工しました。




ほぼ完成
 ポートの加工には電動リューター(ホームセンターで入手出来るホビーユースの安い物)とエアリューター(激安工具店のペンシルタイプ)、排気ポートはエアベルトサンダーを使用しました。
電動リューターは熱中して連続使用するとモーターが焼き切れてしまうので注意が必要です(過去数機焼いております(泣))。




パーツの組み込み
 連日連夜のポート研摩もようやく終了、この後はバルブ、及びカムシャフトの装着となります。
バルブはN42ノーマルバルブシート加工で装着出来るインテーク45mm、エキゾースト36.5mmの物を準備しました。「軽量 ビッグバルブ」と銘打ったこのバルブ、確かにステムの傘上部分が細く肉抜きされており、軽量 化及びエアの流れを妨げないような形状になっています。
今回はローリフトのカメアリAカムをそのまま装着するため、ビッグバルブによる性能向上はあまり見込めないと思うのですが、ヘッド周りのリフレッシュという事で、後々ハイリフトカムシャフトを入れた時にもある程度は対応出来る仕様にしておきたかったのです。
 また、今まではノーマルバルブという事で、ロッカーアームガイドには面 研量の2mmをプラスした6mm厚のガイドを使用していました。
しかし今回使用するビッグバルブは全長118mmでノーマルから約0.8mm長くなっており、バルブ突き出し量 などを総合するとノーマルバルブ使用時に比べ、約2〜3mmバルブステムの上端が上になるので、その移動分2mmを差引いた4mm厚のガイドに交換しました。実はこのガイド、以前間違えて購入してあった物で、こんな時に役立つとは...(笑)




ヘッド搭載準備

 いよいよヘッド搭載です。

ダイアルゲージで1番ピストンの最上点、つまり圧縮上死点を出します。
通常、点火時期調整用のマークで圧縮上死点は出せますが、万が一にもマークがずれている場合もあるので念のためキッチリ上死点を出します。
しかし、この時点でちょっとした間違いを...




休憩
 
 作業の合間には宅配ピザと麦燃料(笑)です!
調子の悪かったヘッドを観察してわかったのですが、インテークのバルブシート及びバルブは異常に磨耗しており、バルブは2mm程度シートに潜り込んでいました...
バルブの傘部分も全周全域に渡って磨耗しており、当たり幅は3mm以上、というよりもバルブ傘部全部が当たり面 と化していました。
これでは調子良いはずがありません。どうやらシートが『有鉛仕様』だったようなのです。

 私はN42ヘッドという事で、比較的新しいヘッドという「思い込み」があり有鉛仕様は有り得ないと決めつけていたのですが、遊びに来ていた みやサンに「有鉛シートでは?」と言われ、ハッとした次第です。
思い込みとは恐い物です...(反省)




作業の友?

 バルブ摺り合わせの友は代替麦燃料です...
パーツの資金捻出で麦燃料も節約です...(泣)




厳しい環境の中...
 ヘッド搭載の日は強風が吹き荒れ、砂埃が凄い一日でした。
エンジンを組む環境では無かったのですが、時間的にも余裕が無いため、敢えて強行!!

もちろん細心の注意は払って作業を行いましたが、私達青空チューナーにとって、これは日常的な環境なはずだと思ったのです。
パーツを組む前には必ずエアブローで埃を吹き飛ばし、組んだ後もさらにエアブロー、この作業の繰り返しで、何とか無事組み上げる事が出来ました。

 また、ハルテック制御ハコスカのヒロヒトさんがキャッチタンク装着に、モーテック制御Zの「みやサン」が遥々群馬より遊びに来てくれました。当然エンジン搭載も手伝って頂きました!




完成図

 
 2日間かけてヘッドの搭載を終えました。
暫く走行した後最終チェックです。
ようやくエンジン始動という段階で、全くエンジンがかかる気配がしません。変な時期にバックファイヤーを起こしています。
「もしや...」
1番上死点でデスビキャップを開けてみると、ローターが180度反対を向いています(笑)。
そうです、ヘッド搭載の時にピストン位置だけ見て載せたのですが、実はもう180度クランクを回さなければならなかったのです。クランク2回転でデスビ1回転ですからね...(笑)
またもやウッカリミスでした...(再度反省)




調整
 暫く近所を走行して異常も無い事を確認、ちょっと足を延ばし高速道路を使用して様子見です。
セッティングは今までと全く変更無しですが、問題なく回るようです。
100km程走行後、ヘッドボルトの締め付けトルクの再確認とバルブタイミングの再確認を行いました。共に異常無し、これで晴れてサーキット走行を迎えられます!!




新ヘッドの状態は
 街中、高速道路を少し『試走』を行いましたが、以前に比べて明かに安定するようになりました。
また心無しか音も乾いた感じになり、回転の上昇も明らかにスムーズになりました。
ジェット類の細かいセッティングの煮詰めは行っていませんが、パワー的には今までと同等以上という感じです。
何よりスムーズになったエンジンは低速もさらに扱い易くなり、気持ち良くなりました。
 こうなってくると『ハイリフト・カム』を入れてみたくなります...(笑)

参考データ

 純正バルブ長さ(L28) IN:117.2mm EX:117.5mm
 純正バルブ直径(N42) IN:44.0mm EX:35.0mm
 純正バルブ突出量(実測値) 約41.5〜42.0mm

 カメアリバルブ長さ    IN&EX:118.0mm
 カメアリバルブ直径    IN:45.0mm EX:36.5mm
 バルブ突出量(純正シート加工後実測値) 43.5〜43.7mm
 ヘッド面研量       1.5mm(燃焼室容量38cc)
 圧縮比(1.0mmG/K時)  12.0:1