゛あなたにも出来る 車高調の製作(笑)″

スカイラインの足製作日記

 サスペンションは箱スカのように古い車にとってはウィークポイントでもあります。
当時のバイアスの細いタイヤに合わせて設計されたサスペンションなので、現代の高性能ラジアルタイヤとマッチングしないというのは無理も無い事だと思います。
本来は全て当時のままに留めるのがベストバランスでしょうが、現代の交通事情、速度に少しでも対応出来るようにしてやりたい、更には現行車をも凌駕できる足が欲しい...これは誰もが夢見る事です。
 私の箱スカも少しでも高性能になるように、かつ安くという目標のもと自分で製作いたしました。
その模様は残念ながら記録も無いので、インターネットを通じて知り合った「sleeping 氏」の2ドア箱スカ(3リッター)の足を製作した時の模様を掲載いたします。
基本的に私の足と同様ですし、反省点を反映して製作しましたので、こちらの方が出来が良いはずです(笑)。
さらに今は車高調整アダプターも進化して、かなり便利になっているようです。
これなら製作も簡単!!ん〜、良い時代です?(笑)

 

ちょっとウンチク?
 この箱スカ、sleepingさんのHPで見れますがとても綺麗なクルマです。
2ドアではもはや貴重とも言える「フェンダー未カット!」(1998.4現在)です
(2ドア=GTR仕様が定番ですもんね)。
 エンジンは3リッター化、リヤブレーキもディスク化されており羨ましい限りです...
おまけにクーラーまで装備されているっ!(笑)
 
 で、まずは構想です。
用途はガンガン走るというよりも、オールマイティーに走りたいという事。
私は敢えて「直巻の車高調整」を薦めました。ガンガン走る訳じゃないのに、何で?と思われるでしょうが、私なりの根拠があるんです。
 
 
「車高調」というと本来は競技等で、シビアなセッティングが要求される場合に用いられる物ですよね。
車両法改正後は一般的な物になりましたが、やはり本来はきっちりセッティングする物だと思います。
ではなぜそんなモノを薦めたかと申しますと、主な理由は「バネレートの選択枝が広い」という事です。
純正と同形状のバネ、いわゆる「荒巻き」は種類も少なく、バネレートすら明記されていないものもあります。これでは「入れてみてのお楽しみ」状態で、万が一希望の硬さでない場合、違うバネを買い直し、さらには車高もまた変わってしまいます。これは頂けません。
 
 一方、直巻バネはレートも細かく設定されていて、数値である程度の硬さを予想できます。バネの値段も安く、買い替えも容易です。
更に、車高調整とする事で、バネを変えても希望の車高を維持する事が出来、勿論本来のシビアな車高セッティングによる走行フィールのアジャストも出来ます。
 
 

 そしてもう一つ、私が重要視している事で、「ストロークの確保」という目的もあります。
車高を落とす場合、元のシェルケース長ではストロークが奪われてしまい、最悪簡単にボトムしてしまいます。車高は落としてもストロークは確保するというのが私のモットー(笑)です。
そこで車高調整アダプターを利用して、シェルケースを短縮加工、更に短い高年式車用のショックを流用する事によって、今後の補修を確保するのです。

 
 
旧いクルマの専用ショックというのは、選択枝も殆ど無く、しかも高価です。これを新しいクルマのものに換えられれば、安価にしかも当分の間、供給の心配をせずに済みます。
 で、今回sleeping氏は私の箱スカに乗ってみて、私の足の設定を参考に、前を6kg/mmのバネを選択。車高は実用性を考えて(笑)、私の箱スカよりも3cm車高アップに設定しました。

 

 まずは分解から。
←決して「解体屋」ではありません(笑)
こうして箱スカが並ぶと、訳も無く嬉しくなってしまいますね(笑)

 

分解
ストラットを外したら、バネとショックを外し、「皿」を落とします。
これはディスクグラインダーで溶接部を削り取って、あとはハンマーで叩けば外れます。(削り過ぎないように!)
作業の時には軍手はしないで(巻き込まれて指を無くします!)、ゴーグル着用。安全には細心の注意を払いましょう。
 
←ゴーグルしてませんね...悪い見本です(笑)
皿が付いていた部分を綺麗に削って、車高調アダプターがスムースに入るようにします。

 

使用部品
 これが今回交換した部品と装着した部品です。
青いのが元々付いていた箱スカ用のアフターパーツのショック。オイル式のためロッドは縮んでいる状態です。
一方黄色い方が今回装着したTRDのAE92レース用ガスショックです。ガス封入式なのでロッドは伸び切った状態。ショックボディ長の差は7cm!これが重要なんです。
 バネはこんなに自由長が違います。

 

シェルケース切断
 シェルケースを切断します。
これには「パイプカッター」を使用します。カットはケース短縮分の3cmプラス、アダプターの段差部分3.5cmの合計6.5cmです(これは車高調整アダプターに依存しますので注意!)
「ツマミ」を少しずつ締め込みながら、クルクルと回していきます。
 すると、こんなに簡単に綺麗に直角に切断できました。
パイプカッターでなくても、ディスクサンダーにカット用の刃を付けて切断しても良いですし、鉄鋸で頑張ってもOK、


車高調整アダプター組み込み

 シェルケースのカットが済んだところで車高調整アダプターを仮付けして様子を見ます(本付けしてから「もう少し...」は困りますもんね)。
仮組みしたストラットをクルマに付けてジャッキを降ろし、車高をチェックします。
無事設定通りになりました。
 そこでアダプターを本付け溶接して、スラグ(アーク溶接で発生するカス)を十分に落とし、塗装しました。
この塗装は本来であればボディと同様の2液ウレタンが望ましいと思うのですが、時間の都合上、簡単なスプレーに。しかし使用したのはホルツ製の1液ウレタン入りスプレーです。これは丈夫ですよ!
 
 いよいよ組み込みです。
ストラット乾燥の間、リヤスプリング&ショックを交換したのですがここでハプニングが...


問題が...
 実はこの箱スカ、リヤにスタビライザーが装着されていたのです。箱スカは当時オプションであったようですが、その形状とは異なります。どうやら前オーナー若しくはショップが作ったもののようです。
そのスタビ支持部がロアアームに溶接されており、スプリングを抜くのにロアアームを下げようとすると、それがメンバーに干渉してしまうのです。困った!!
 デフメンバーや、各部を緩めてサスメンバーを自由に動くようにしても、どうしてもスプリングが抜けません。サスメンバーを落とせばイケそうですが、それでは大仕事になってしまいます。
sleeping氏は今までのバネは使わないという事なので、やむなく車上切断して外しました...


完成
 やっとの事でリヤの作業を終えて、塗装も乾燥したところで装着です。
シェルケース全長が短くなっているので、装着は楽チン!
本来ならロアアームのナックルアームとストラットの間にスペーサーを入れて、ロアアームの角度を矯正してやるべきでしょうが、3cmカット程度だと、無くても大丈夫そうです。
 完成した「sleeping箱スカ」です。
実用に支障が無い車高短で、なかなか良い感じです。
自分の箱スカは車高を下げ過ぎて苦労してますが、人に作ってあげた足が成功するというのも悲しいですね...まぁ自分の足が下げ過ぎという経験があったからこそ、今回自信を持って適切な車高の足が作れた訳ですが...


注意
 という事で、箱スカ車高調整足回りの製作は終わりです。
ショップで高い金を出して足を購入するのも「安心」ですし性能も保証されているかもしれませんが、このように簡単に、しかも安価に作れるという事を知って頂ければと思い掲載いたしました。
この作業はオーナーのsleeping氏も立ち会いの元、どのような加工をするのか確認して頂いた上で作業しており、全ての責任はオーナーに持って頂いております。
 サスペンションは重要な部分でもあり、万が一の際には命に関わる部分でもあります。初めてチャレンジする時には十分慎重に、完成した後も暫くはこまめにチェックし、定期的点検を怠らない等注意して下さい。
 また、この掲載記事を参考に作業する場合は、個人の責任で行って下さい。参考にした結果 、万が一何らかのトラブル、事故等により車両、その他の破損、ドライバー及び第三者に危害があった場合でも、当該記事作成者の私は一切責任を負いません
ですが勿論、質問等にはお答えしますし、私の解る範囲でのアドバイスもさせて頂きます。
 「Do it yourself」を自己責任のもとに楽しみましょう!

1998年4月  ET