箱スカ チューニング日記 2002年4月17日  R32 Skyline用ブレーキ装着

 私の箱スカは10年前の車両製作時にニスモのMK63キャリパーベンチレーテッドローターを装着しました。当初からサーキット走行や、エンジンチューンは考えていたために、最初からその『器』だけは作っておこうという考えからでした。

箱スカのノーマルキャリパーは2ポッドの対向ピストン式という構造で、これはこれで非常に良い物です。その証拠に現行車種でもスポーツモデル以外は片押し式が殆どで、対向ピストン採用のキャリパーを採用している車は少ないはずです。30年前のファミリーセダンにしては豪華なブレーキとも言えると思います。
街中においては問題も無いはずですが、サーキット走行を考えた場合、キャリパーもですが、ソリッドのローターがどうしても不安に思えたのでボルトオンで装着出来るMK63とベンチローターを装着していました。

車両が完成後は数々のサーキット走行会を経験しておりますが、エンジンチューンを行い、 セミワークスを装着し極太のSタイヤを履くようになった現在では完全に役不足となってしまいました。
筑波サーキットであれば最大でも5周程度しか持ちこたえられません。制動感も「つま先で突っ張っている感じ」(笑)で頼り無いものでした。そして床までペダルが吸い込まれて行くのです(恐)。
エンジンパワーもタイヤグリップもMK63を使用していた当時から数段上がっているので、当然と言えば当然でしょう...

ブレーキダクトなどの設置も考えたのですが、根本的な解決を行いたいと思いブレーキシステムのグレードアップを考えました。
既に他車種ブレーキ流用は一般的となっており、箱スカであればR32キャリパーとφ300mmローターのボルトオンキットが販売されています。
重要部品であるブレーキだけに、このキットは確実で魅力的でしたが、重大な問題が...
そうです、14インチホイールが履けないのです...

私の数少ないコダワリの中の一つが14インチホイールです。
絶対性能を求めれば間違い無く15インチを選ぶべきなのですが、4ドアの長いホイールベースには小さいホイールの方が似合うというのが私の考えです。
従って14インチを装着出来る事が最大の要件となるのです。勿論、15インチホイールも所有しており、タイヤ選択肢の多い15インチの使用も考えてはおります。

その14インチを履くためにはローターは最大でもφ280mmまでという事がわかり、周りの知人でも製作した人が出て来ました。負けじと私も製作する事に。

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 実はブレーキ製作は以前より考えており、ローターも各種収集していました(笑)
ワンボックスからFF車まで使えそうな直径のものを貰いました。
中には『使える』と思い、センターの穴を箱スカのハブ径に合わせて旋盤加工、取り付け穴も開け直して装着してみたら、キャリパーが物理的に付かなかったなんていう事も...(笑)
結局はR32スカイラインTypeMのローターを加工して使う事になりました。


 これはR32キャリパーを装着するために必要なキャリパーステーを製作しているところです。
ストラットのキャリパーステー部は切除済みです。と言うのは、14インチにこのキャリパーを収めるには15インチキットのようなオフセットステー方式は物理的に不可能と解ったのです。
オフセットステーを使えば、キャリパーはノーマルステーを避けた位置、つまりノーマルステーの上か下 となり、上にすればストラットと干渉し、下にすればアーム類と...

そこで純正ステーを切り取ってそこに新たにステーを作る必要が出る訳です。
そのステーですが...


 材料は20mm厚の鉄板です。
さすがにこの厚さでは私の手持ちの工具や道具ではどうしようもありません...(ディスクサンダーで概形まで切り出したりもしましたが...)
そこで私より先に同じ仕様を製作された知人に同じ物を鉄工所で切り出してもらっておきました。

これをベースに位置決めと形状変更を行います。
ステーはストラットに対して車体正面から見て若干斜めに付けなければなりません(スピンドル角度分斜めになるという訳です)。ですのでステーも3次元的形状となるのです。
これは当てがっては削ってを繰り返して現物合わせしていきます。


 整形後、キャリパー取り付け穴を開けて表面の黒皮を削ってやりました。
ここまで来るとソレらしくなってきます!!


 いきなり完成です(笑)
今までは溶接は全て一般的なアーク溶接機(購入価格2万円のもの)で行って来ましたが、今回のこのキャリパーステーはさすがにアークでは...
そこでアルゴン溶接機を借用して自分で溶接しました。

溶接する前にステーの芯出しを行わないと当たり面が均一になりません。
私はキャリパーのノーマル配管を使用してコンプレッサーエアで加圧出来るようにしました。
これに2〜3kg/cm2程加圧してやればキャリパーはローターを挟み込むのでセンターが出ている状態になります。

その状態でキャリパーステーを点付けで仮溶接し、キャリパーを再度外して本溶接しました。
車高調整アダプターは一般的な溶接タイプで、今回内径φ60mmのバネを使用するために新規に揃えました。
シェルケースもAE92ショートショックを継続使用しますが、若干基準車高を上げられる様に10mm余裕を持たせて、ノーマルより55mm短縮加工としました。


 これが溶接箇所の画像です。
『これでもか!』という位に溶接しました(笑)。非常に重要な部分だけに慎重に溶接したつもりです。お陰でケース裏側まで溶け込みがありショックを入れる時に苦労しましたが...(笑)
溶接は非常に難しい物で、私もまだまだ熟練が足りませんが、作業の範囲が格段に広がる溶接は非常に楽しく便利なものです。
夢は車庫に200Vを引き込んでアルゴン溶接機導入なんです。


 14インチホイールに組んで干渉など無い事を確認しました。
キャリパーとホイール内面とのクリアランスは5mm程度!
我ながら満足の出来です!!


 車両に装着してみました。
ホイールはワタナベの14-9.0Jです。キャリパーとの干渉を避けるためのスペーサーも必要ありません。
他社のホイールでは干渉する場合もあるかもしれません。
蛇足ですが、この年代の車に装着出来る一般的なホイールでは、やはりワタナベが形状的にも一番都合良いように思えます。バナナの反りがクリアランス面 で非常に良いんですよね(笑)


 こんな感じで14インチ対応の止まれるブレーキは完成しました。

装着してまだ本気で走る機会はありませんが、高速道路などでの減速ではその効果 をはっきり体感出来ました。
踏力に対して非常にリニアで安心感がある制動です。
またブレーキパッドも高性能な物が豊富でしかも入手が容易というのも大きな魅力です。これからパッドなどを色々と試してサーキットのラップタイム更新を目指したいです。

最後に、今回の作業は車にとって非常に重要な部分の製作作業でした。その部分を自作するというのはリスクも高く、誰もに勧められるものではありません。
しかし『こんな風に作れるんだよ』という参考になればと思い、掲載しました。
従いまして、溶接作業などに慣れていない方はそれなりの技術を持ったショップや工場にお願いして下さい。

車は

『止まっちゃったよ〜』

と言うのは笑い話にはなりますが、

『止まれなかったよ』 と笑って済ます事は出来無いのです...

勿論、ノーマルと言えどもメンテナスされていないブレーキは同様です。

製作協力:S1ワークス

※チューニング、修理等についての内容、理論等についてはこの記載事項が全て正しいというものではありません。色々な情報、資料、経験を元に私が個人的に判断したもので、私のクルマに有益なチューニングであっても全てのクルマにおいて通 用するとは限りませんのでご注意下さい。また、当ホームページ記事を参考にした事によって生じた事故、損害、死傷等は掲載者であるETgarageは補償いたしかねますので個人の責任、判断においての作業をお願い申し上げます。
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